備忘録 of Making 3
脱泡!歯間ブラシ!

 フィギュアを作るに当たり、試したこと&失敗したことを書き留めるページです。
 これから書き留めることは、参考になる、というよりかは初心者は
 こんな失敗もするねん。という程度にとらえて経験者の方には笑っていただき
 同じく初心者の方には"気を付けるべし"と感じていただければ
 郡津としては幸いです。

前回は発泡で今回は脱泡です。
原因と方法論のことですが、泡の発生原因が異なりますので一見
同じ様な内容なんですが、ちょい話が異なります。

まず発泡は水分+キャストの反応によるガスの"化学的"発生と
注型時の等の"動的"な巻き込みによるものが大半です。

これに対し脱泡は上記の動的な泡の発生に対して元々
キャストが入り込まないような髪の毛の先など
"静的"な欠落発生にも対応しなければなりません。

今回はこの"静的"な欠落発生について検討したいと思います。
上の型は"みかん"の前頭部にあたります。

右上の部分、前髪部分を拡大したものが下の写真です。


先端部は逆テーパーではないもののねじれの関係などでうまく流れません。
こういったものの場合、型やキャストのフロー設計による方法では解決に限界があり
注型段階で力技を要求されることがあります。

この型の場合、当初よりそういったことが想定されたので
実は横向きトップフロー(オーバーフロー式?)を採用したのですが
それでもうまくいかず普通のトップフローに戻したという経緯があります。
(だから型の側面にフランケンの様にプラ棒が突き刺さって
いやがったりしていますorz)
"みかん"は高コスト仕様なのであんまりいろいろなことを試すことが
許されませんでした。
(ちなみにパーソナルベースでできそうな細部への流し込みには
紛体(アルテコSSPやべビーパウダー)をまぶし毛細管現象を利用した流し込みや、
袋に入れてぶん回す文字通り力技な人力遠心脱泡などがあります。しかし、
今回は紛体法が使えないのと人力遠心分離は個人的に実績が無いのとで
新方法を検討せざるを得ませんでした)

そこで登場したのが"歯間ブラシ"。
歯間ブラシ自体はこれ以外のところでもいろいろお役立ちなので
お勧めですが、今回はその目的外使用の最たるものです。
使用するタイプは糸張りではなく爪楊枝状で先端にナイロン等の
毛が植毛されているものを選びます。
100均でもいいですが、先端が柔らかい毛が植毛されていて軸が
先端までプラの極細タイプが選択出来ればベストでしょう。
郡津はなぜかヨドバシで購入したホビー用マイクロブラシを愛用しています。
(下のブラシ自体は歯間ブラシではないのでご注意)


今回の"みかん"の事例でご説明します。
まず全体で必要とする注型よりも遥かに少ない分量でキャストを
混合します。ただし少な過ぎても、硬化不良や色むら(有色の場合)の
元になりますので、ABあわせて最低15g程度は必要であることは
覚えておいてください。次に混合済みのキャストを泡抜けしない部分に
少量流し込みます。流し込んでより後、直ちに歯間ブラシ軽く突っ込み
壁に沿わせるように抜き差しします。くちゃくちゃとHな音がしますが(笑)、
4、5回で小さな泡が浮かんできます。その段階でブラシを抜きます。
それ以上やりすぎたり、硬化直前までやるとかえって空気をかむことに
なるので注意しましょう。
浮いてきた泡は表面で泡のまま留まることがあるのでこれもブラシで
端に寄せ、つぶしてしまいましょう。1回1回の作業でブラシをきれいに
ふき取ると、少なくとも4、5回は使えます。この後、普通に注型すれば
細部までキャストが行き届いた状態の物を作ることができます。
一見色むらが起こりそうですがちゃんと配合比を守っている場合は
ほとんど起こらず、むしろ2度注型によるパーティションラインが起こる
可能性のほうが気になるでしょう。

この方法のよさは、多面型であっても透明シリコンを使わずにお手軽に
視認できるので確率的にほぼ100%泡抜けさせることができることにあります。
弱点は、工数がかかることと、手際のよさが要求されることですが、
これらは経験値があがればまったく問題ないレベルで誰でもできるようになります。

というわけで前回に比べて難易度が上がった型ではありましたが生産性は
大幅に向上いたしました。難易度が高いほどなぜか画期的なアイデアが
思い浮かぶのは不思議だなぁといつも感じます。

 教訓  画期的なアイデアはそれが必要とされるときのみ生まれる